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[研究成果]システム生態学分野・徳田誠准教授ら

2022年4月4日

 生物科学コース・徳田誠准教授(システム生態学分野)のグループは,昆虫などの節足動物が体内に植物ホルモンのオーキシンやサイトカイニンを持っていることを明らかにしました。
 

 本成果は、科学雑誌Scientific Reportsに「Terrestrial arthropods broadly possess endogenous phytohormones auxin and cytokinins」として掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41598-022-08558-6
 

 本研究の概要は以下の通りです。

 植食性の昆虫の中には、植物の発生過程を操作して、虫こぶを形成する種が知られています。これまでの研究により、虫こぶを形成する昆虫が、植物ホルモンのオーキシンを合成する酵素を持っていることや、サイトカイニンを合成している可能性が高いことなどを明らかにしました。また、オーキシンを合成する能力は、虫こぶ形成昆虫だけでなく、虫こぶを作らない植食性昆虫や、さらには植物を食べない昆虫も持っていることも判明しました。

 本研究では、なぜ植物を食べない昆虫の体内にも植物ホルモンを合成する能力を持っているのかを明らかにするため、昆虫に加えてダニやクモ、多足類を含む様々な陸生節足動物を分析し、オーキシンやサイトカイニンを保持しているかを調査しました。

 その結果、分析したすべての節足動物が、高濃度のオーキシンを体内に保持していることが明らかになりました。一方、サイトカイニンに関しては、特定の昆虫のみが保持していました。昆虫の中で、虫こぶ形成性や植食性などの性質と、保持している植物ホルモンの量に関係が見られるかを分析した結果、オーキシンの量には違いが見られなかったのに対し、サイトカイニンは植食性や虫こぶ形成の種の方が他の昆虫よりも多く有していることが明らかになりました。

 これらの結果は、昆虫を含む節足動物の体内で、オーキシンまたはそれを合成する酵素系が何らかの重要な機能を持っていることや、植食性や虫こぶ形成昆虫が植物を摂食する際や虫こぶを形成する際に、例えば植物の代謝系を撹乱するなどの目的でサイトカイニンを利用していることを示唆しています。

 これまで、植物を食べる一部の昆虫や、虫こぶ形成昆虫がオーキシンやサイトカイニンを有していることは断片的に知られていましたが、本研究のように、昆虫の広範なグループを対象として網羅的な解析がなされたのは初めてで、陸生節足動物が例外なくオーキシンを有している可能性を示したのも今回が世界初の報告となります。
 

連絡先: 徳田 誠 tokudam(at) cc.saga-u.ac.jp

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